津波被害の特養老人ホーム、来月再開

津波被害の特養老人ホーム、来月再開

津波被害の特養老人ホーム 来月再開

 

 

震災の津波で入所者と職員49人が死亡・行方不明となった宮城県南三陸町の特別養護老人ホーム「慈恵園」が8月4日、内陸に移転して約3年半ぶりに運営を再開する。

 

当時、入所者の救助に当たった職員の佐々木博美さん(53)は、助けられなかった命を悔やみながらも、「たくさんの人に穏やかな時間を過ごしてほしい」と願っている。

 

あの日、勤務中だった佐々木さんは、沿岸部で煙が立ち上るのを見た。津波だと気づいて入所者と高台に逃げたが、海から約1キロ、海抜15メートルの場所にあった施設は瞬く間に濁流にのみ込まれた。

 

波が引いた後に戻ると、平屋建ての施設には天井近くまでがれきが流れ込み、「助けて」という声が聞こえてきた。カーテンを担架替わりにして、職員らと約30人を高台に移したが、冷たくなっていく入所者もいた。「まさかここまで津波が来るなんて。対策がおろそかだった」。1994年の開業当時から勤める佐々木さんは自分を責めた。

 

佐々木さんも町内の自宅を流され、避難所に身を寄せることになったが、翌日から施設で入所者の持ち物を探し、通帳や印鑑などを見つけた。遺族に届けると、「本当にお世話さまでした」との言葉が返ってきた。「亡くなった方のことを思うと、つらくて仕方なかった。でも、ご家族の励ましで、もう一度頑張ろうと思えた」と振り返る。

 

2011年9月から、高齢者と障害者が暮らす町内のグループホーム型仮設住宅で働きながら、施設の再建に動き出した。施設長らと安全対策マニュアルの見直しを行い、自然災害を想定した避難訓練の実施を新たに盛り込んだ。災害用伝言ダイヤルを使った非常時の職員の連絡網も整備した。

 

新たな施設は木造平屋建てで2970平方メートル。海から5キロ離れた内陸の民有地約8700平方メートルを借りて建てられ、総事業費11億円は国の補助金などで賄った。入所者は長期が50人、ショートステイが20人で震災前とほぼ同じ。長期の入所申し込みは町内外の約100人からあったという。

 

県長寿社会政策課によると、県内では特別養護老人ホーム82施設が被災した。慈恵園が開業すれば、運営再開は80施設となる。佐々木さんは「立ち止まると震災のことを思い出してしまうから、とにかく走り続けてきた。今度こそ、安心して過ごせる施設にしていきたい」と話している。

 

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=102588
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