介護離職 仕事との両立支援急げ
家族の介護を理由に退職する人が急増している。少子化や介護職員不足が背景にある。企業にとっても経験豊富な人材を失うのは損失だ。介護と両立できる柔軟な働き方と支援策の充実で防ぎたい。
一年間に十万人。親の介護や看護を理由に退職した数だ。親と一緒に暮らす中高年が多く、最近は男性が目立つ。今後十年間に団塊世代が七十代半ばになる。子どもの世代はきょうだいが少なく未婚率も高い。親の介護に直面すると、これまで以上に退職を余儀なくされる可能性が高まる。
総務省が昨年まとめた就業構造基本調査によると、働きながら介護している人は二百九十万人。うち、働き盛りの四十代、五十代は百七十万人。その四割は男性だ。
介護は先の予測が立たない。育児・介護休業法で定める年間九十三日間の介護休暇を使っても、三カ月で終わるわけではない。職場の内外に支援がないと、結局は仕事を辞めざるをえなくなる。
一度離職してしまうと、多くのリスクを抱える。家計経済研究所の調べでは、在宅介護にかかる自己負担分は平均月六万九千円。介護保険で補われても、収入が途絶えると家計の重荷になる。再就職も難しい。老後への備えも失う。
企業にとっても職場で大切な役割を担う社員の退職はデメリットだ。柔軟な働き方ができれば、それだけ退職を防げる。
大手化粧品会社は、介護期にある社員に対し転居を伴う異動を免除している。大手住宅会社は、介護休暇を増やして分割して取れるようにし、失効した有給休暇も介護に使えるようにしている。
国の支援策としては、介護職員を大幅に増やし、介護休業期間の拡充や、休業中の給付金を増額するのも一案だろう。
一方で、介護休業の取得率は一割未満しかない。経営環境の厳しい中小企業では現行制度すら絵に描いた餅になっている。
女性が働きながら子どもを産み育てやすいようにと、子育て支援は社会の問題として語られてきた。それに比べて介護は「家庭の問題」として表に出にくかった。だが、多くの職場で共通し、誰もが当事者になりうる。男性は問題を抱え込みやすいとされる。身近に相談の場があれば、支援も受けやすくなるのではないか。
政府は本年度、有効な支援制度を実際に企業に導入してもらい、効果的な事例をまとめる。年間十万もの人が自ら働く場を失うような、いびつな社会を変えたい。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2014072302000117.html
http://gyazo.com/c24cd4c9685f7b7ddc43a7f200a89cb1
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