介護施設「サロン」併設広がる 京都市内、厚労省も注目
地域住民が気軽に訪れる「サロン」を介護施設内に併設する動きが京都市内で広がっている。これまでサロン活動は生きがいづくりや孤立を防ぐ場として注目されてきたが、在宅で暮らす高齢者を介護と医療が連携して支援する「地域包括ケア」の実現に向けた「切れ目ない支援」の方策としても期待が寄せられている。
「顔なじみの人がいたし、ここがあってよかった」。右京区山ノ内宮前町の地域密着型サービスセンター「welcome やまの家」を利用する近くの中嶋榮二郎さん(88)は、施設に併設された喫茶スペースの常連客だった。昨年12月に体調を崩して1カ月入院したため、なじみのセンター施設を利用し始めた。施設にとっては入院以前の中嶋さんの姿を把握しているため、「どんな状態に戻せばいいかを踏まえた支援が可能だった」といい、現在は1人暮らしを続けられるまで回復した。
喫茶スペースは、施設職員がスタッフを兼務し、ほぼ毎日、利用者も含め、世代を超えた人が集うサロンの場としても活用する。訪れた人は介護専門職へ暮らしの悩みを気軽に相談できるため、介護保険などの専門サービスを検討する「入り口」となる。同センターは「制度が補えない隙間は必ずある。ここが拠点となって地域のまちづくりにつなげたい」と意気込む。
北区紫野大徳寺町の地域密着型総合ケアセンター「きたおおじ」は、昨年4月からサロンを始めた。第2・4土曜、日曜に飲食物を提供するサロンスペースを設け、地域介護予防推進センターと介護予防事業も行う。「顔が見える関係」で地域で暮らす高齢者の情報を共有する場も目指しており、「地域を支える住民を専門職がサポートする役割を果たす」とする。
介護や高齢者支援の先進的な取り組みを進める福岡県大牟田市では小規模多機能施設にサロンの併設を義務付けるなど、同様の取り組みは全国で広がる。厚生労働省は6月に成立した「地域医療・介護総合確保推進法」で、これまでの介護予防事業に替わる活動指針の一つにサロンを掲げた。同省振興課は「地域包括ケアの重要な役割を果たす」とし、今月中にも自治体に事業対象となるサロン活動のガイドラインを示す予定だ。
市内では両施設が中心となり、併設するサロンの機能や枠組みなどを考える検討会が続けられている。中心となっている京都地域密着型サービス事業所協議会の山田尋志会長(67)は「介護が必要になる前の高齢者と関わることは、これまでのケアに欠けていた視点。住み慣れた町で最後まで暮らせるようにするために、介護や医療など、さまざまな分野の人が『伴走』する新たなスタートラインになる」と話す。
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20140728000058
http://gyazo.com/b2f741d59a1d01aa1601183043528a95
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